2013年12月27日金曜日

青梅の林業に生きる-木工やアロマ対応で林業経営に活力を!

1.無価値の間伐材の利用から

 最近、仕事の関係で、東京都下青梅市の成木を訪ね、若き林業者であるの「環境林業 成木の森」の中島大輔さん(32歳)に2度ほどお会いした。お父さんと100haの林地の管理に当たっている。
 
当方も8年前に「成木川の早太郎」という間伐材をめぐるささやかな環境小説を書いた(静岡県教育委員会の推薦図書になる)。その題材を得た場だけに、計7時間ほどと話が弾んだ。 
 
 小説でも「日本の林業は出口の見えないトンネル」と表現したが、現場にも名栗川に抜けるトンネルがあり。これに引っかけた表現である。そのトンネルの手前に西成木のバス停があるが(青梅方面からのバスの終着駅)、近くに中島さんの自宅がある。それだけでなく、バス停すぐ前には、中島さんが昔の借家跡に建てたという15坪ほど(一部2階あり)のロッジ風集会施設もある。これを拠点にいろいろの催しを開き、林業の活性化に寄与した・・・というのが中島さんの願い(写真1)。 

 
 写真①集会所用の建物
 
いま、どこの村や大字と名乗る地域でも、中島さんのような専業の林業家は1人とか2人しかいない。専業林業者や林業組合といっても、あくまで国や県の補助金で、森林を維持・管理するのが主目的。「林業本来の姿である材木売って儲けるとか、経営を維持できる状況にはない」という。 

中島さん自身も後継者のため、サラリーマン生活を投げ打って林業者になったものの、100haの森林を相手にしても、サラリーマン時代の所得に遠く及ばないそうだ。 

日本の国土の66%は森林である。資源のない日本にあって、水や森林は貴重な資源のはず。だがそうなっていない。「成木(せいぼく)の立木そのものは極めて安い。しかし、急峻な山地から運びだすとすれば、林道の不備もあって労力がかかる。市場で丸太として売れば実質赤字になる。このため、下草刈り、枝落とし、間伐、林道整備も補助金なくしてはやれない」。儲からないから人も雇用できず、林地はいたるところで荒れ放題。これでは、豊富な雨水も地中に残留することなく一気に流れ、土砂災害や洪水も起きる。 

台風のたびに、林地に放棄された間伐材がダムに流れ、流木の山を築いている写真を見た方も多いはず。林地の保水力がなくなれば、一気に流れくだり、ダムが干しあがる現象も多発する。多くの生活者は、森林と距離を持つため、この事実に無関心である。 

中島さんは、「政府も補助金で、目先の手当てをするだけで、抜本的に林業経営が回っていくような対策を講じていない。私としては、価値のない間伐材を使い、大工さんと協力し机、椅子、置物、アクセサリーなどの木工加工品の開発も始めている。また森林浴といわれるが、樹液などから癒しの基となる芳香(油精)を取り出し、アロマ・セラピーに通じるよう香水化しようと協力事業者に商品化のお願いもしている。こうしたことができ、ささやかながら収入があがるとなれば、兼業の林業者にしても、林地の整備もやれるようになる」と語る。

   写真②足を開くことで、机の面積を2~3倍に
写真③ 2人掛けの椅子。1人掛けもあり。           

 木工については、写真②のような開閉式の支柱で、テーブル面積が2倍、3倍になる商品、③のような2人掛けや1人掛けの椅子、④置物、⑤自然木を使った欄干や輪切りにしたペンダント・・・といった1点ものも作っている。まだ、いくらに売ってよいか迷いがあるようだが、写真を見て「このくらいなら買いたい」と言っていただければ、大変助かるはず。

④自然木を生かした置物 

 当方も6次産業化のお手伝いのなかで、①林地に生える榊(さかき)を畑地で増やし、ブランド化して売る、②林地にはえるカエデのシロップを集め、これをミツバチに食わせ、機能性の高いハチミツにする・・・などの話にも接してきた。 

 日本には広大な林地があり、間伐材やその枝葉という資源は無限である。政府も、こうした木工品やアロマ・セラピーに沿った商品、メイプルシロップ関連品、徳島県の葉っぱビジネス、アケビ等ほかの枝ものビジネス(直場所の顧客調査で「枝ものがもっと欲しい」との華道のお師匠さん2人からの要望を受けたこともある)・・・等々といった、林業周辺のビジネスの商品開発、マーケティングにも手を貸してゆくべきである。まず補助金ありきでなく、補助金が将来「1倍返しくらい」にはなって返ってくる緻密な戦略が必要だ。 

 間伐材を使ったバイオマス発電の実験も、各地で補助金を前提で行われたが、どこも成功例を聞いていない。当ブログでは一度、ガス化の提案をしたが、都市ガスに比し熱カロリーが低い欠点がある。都市ガスとミックスして価値が出るようだ。ガス会社に売電同様に、売ガスできる制度を作れば、これまた普及する可能性は高い。発電よりシステムが簡単と思われるからだ。売ガスで林業地帯が潤えば、森林管理も進む。 

2.急速に失われる世界の森林=1時間に東京ドーム127個分

 中島さんとも同意見だが、「やがて世界の森林が枯渇し、日本の林業がうらやましがられる日が来るはず」だ。だがそこまで待っているうちに、林業地区に後継者も従業者もまったくいなくなってしまう。そうなってからでは遅いのだ。本来の林業についても簡単に触れておきたい・・・

 ネット情報によれば、2000年から2010年までに、世界で減少した森林面積は年平均約521万haになる。1時間に東京ドーム約127個分に相当。減少の著しいのは、アフリカ、南米で、中国や欧州は植林も盛んで増えている。しかし、中国の場合、現状の供給は需要に追いつかず木材価格は高騰している。 

 残念なことに、中国はスギ、ヒノキを使ってこなかったため、木材の基準に、スギ、ヒノキが入っていないため、日本から輸出ができない。また、テレビで見て分かるように、全体的に鉄筋の集合住宅が普通という事情もあって、すぐには、日本からの輸入が進まない。 

 最近、高校時代の友人と話したことだが・・・中国であれ、その他のアジアの諸国であれ、日本のスギ、ヒノキが欲しい国があれば、政府が仲介し、立木で売り、相手国の労力で切り出してもらい、その国に持ち帰って利用してもらう。労働者の仮設住宅はこちらで準備、日本の各地を回る・・・こんなことができないものか。 

 スギ、ヒノキについては、未乾燥ではゆがみが生じ乾燥を要する。また乾燥してもなおかつやわらかい欠点がある。乾燥にコストもかかり、圧縮や硬さを生む樹脂加工などにもコストがかかる。これらへの対策も国を挙げて取り組み、ぜひ林業資源大国を生かすべきで、これまた成長戦略の1つになるはずだ。

2013年12月2日月曜日

溶液土耕栽培(明大農学部・小沢聖特認教授が研究)の普及を!

 静岡で地上に水槽を設置した野菜の水耕栽培を見学したこともあるが、先般、明治大学黒川農場の収穫祭に伺い、水槽を使わず土壌に液肥を直接注入する溶液土耕栽培の講演とハウス実験棟の前で、小沢聖特任教授からその説明を受けた。

 国土の60%が乾燥地帯のイスラエルで、節水栽培のため開発され、すでにオランダ、韓国はもちろん、フイリッピン、マーレシアでも普及をしているが、日本ではまだ「これから」の段階とのこと。イスラエルは園芸作物の輸出大国になっているが、その原動力が、この栽培法だと言う。
 
  
 
 水に肥料を溶かした培養液を、必要に応じチューブから点滴のように土中に送りこむので、水も肥料も少なくて済む。余分な肥料が土中に増えたり、水と共に肥料分が地下水に流れ込むこともなく、ブログ別掲の「環境保全型農業」に役立つ。発展途上国であれば、糞尿を処理した溶液も使うことも考えられる(そのまま使うと、チューブが目詰まり)。

 問題は日本の場合、純粋な液肥をつかうため見かけの肥料コストが高くつくこと。だが、①肥料(基肥不要・適正施肥)、②建設費(ハウスは並み、土壌は普通の畑地)、③センサーによる自働で注入で作業費・・・の3要素が大幅に削減、④適正な水・液肥の管理で多収になり、所得が高まる。
 

 外国製の注入チューブも見せていただいたが、細くきゃしゃな感じだが、ところどころに付けられた弁から、つまることなく溶液が点滴されるので、コストもかからない研究されつくした品である。

     問題はキュウリであれ、トマトであれ、この農法の収益性の資料が欲しい。設備投資や収支については、佐賀県「佐城普及センター」が取りまとめた資料を紹介しておきたい(ネットより。促成ナス)。明大の実践とは違いもあるはず。あくまで参考資料である。

表―1 システムの概要とコスト(10a当たり)


部品名

数量

金額(円)

液肥混入機(AV200V)


540,000

原水フィルター


47,000

原液タンクセット


23,000

撹拌機セット(200V)


39,000

Nタイマー基本2系統


60,000

電磁弁


29,000

点滴チューブ


114,000

メールアダプター

15

,000

ラインエンド

15

,200

PFメ―タ―


,800

ミズトール


,700

ECメーター


25,000

合計

 

903,700

注:施工・調整・ポンプ代・ポンプ制御等は別

 

表-2 溶液土耕栽培の効果(比率は導入前と比較)


項目

導入後

比率

労働時間

(施肥・灌水)

10.4hr

24%

肥料代

110,124円

60%

収量

19,779kg

125%

粗収益

,538,120円

125%

生産費

,643,090円

105%

所得

,895,030円

201%

秀品率

46.8%

106%

施肥N量の削減

 

76.1%

注:導入前が、どのような栽培かは不明。リアルタイムの

診断によらない水・液肥供給との比較?実額を参考に!

 
 
 いずれにしても・・・
①基肥不要・・・初期生育を抑え、生育段階に合わせるので過茂にならない。
 
②水と液肥の同時施用・・・生育を安定させ、収量もアップし持続で多収穫になる。
③土壌が良好に保たれる・・・細かく均一に水・液肥が点滴され、土壌の物理的性が悪化しない。。
④培地は土壌そのもの・・・自然の土地そのものが使え、コストがかからない。また土壌が緩衝力を持つので不意のトラブルにも耐えられる。