2011年11月19日土曜日

農産加工品の売価・値入れは?売価調査が必須!

    これは加工品の話ではないが、鹿児島の方から「直売所で初めて花を売ることになったが、売価設定をどうしたら良いか」と問われたとき、「原価÷0.50~0.40で良いのではないか」と答えたことがある。

  だが農家の方で、自家製品の原価を正確に把握している人は、10%もいないことが分かっている。分かっていながら上記のアドバイスをするのは矛盾である。6次産業化や農商工連携事業で、ジャムやジュース、チーズ、ソフトクリームなどの新製品を作る場合も、同じように原価が問われる。

  平均的な農産物の原価は、農水省や県農業試験場などの経営指標を参考にすれば、主材料の原価は出せる。経営指標について言えば、北海道(農業生産技術体系)、秋田、石川7、群馬、長野、岐阜、鳥取、広島、山口、熊本など多数の県で、細かい作物・畜種ごとの指標が出ている・・・農水省のものよりはるかに細分化した作物別の統計がある。ぜひ参考にして欲しい。

 だが、法人経営などにおいては商品別、作業別の労働時間の記録をとるようにしないと、正確な原価は出ない・・・と自覚すべきだ。合わせて、従事者全体の1時間労賃も確定しておく必要がある。

 
 加工の場合、「販売段階で利益を確保する」との考えでなく、「原価段階で生産に要した家族労力費、及び利益を確保する」と考えるべきである。経営主の所得も生産段階のものは原価に含める・・・そのうえで下記の粗利益を上乗せすべきだ。

  問題は粗利益額・率である。これを原価に乗せないと、販売が成立しない。粗利益=販売管理費+利益(通常は経常利益)・・・だが、販売管理費には、梱包費、輸送費、各種の中間手数料、販売の間接費、セールスマンや販売に要する人件費などが含まれる。

 仮に直売所で売る場合、委託手数料は加工食品や総菜では20~28%の例が多い(青果・花の12~20%と違い)。ネットで直接消費者に売る場合でも、大手のポータルサイトに出店するときは「出店料、販促費、カード手数料などに12%ほどかかり、粗利益率20%以下であれば損する」と言われている。

 
 HPで直接販売する場合、宅配便を使うので配送費のみですぐ15%ほども掛ってしまう。包材費や人件費まで考えれば、すぐ30%近くの粗利益が必要になる。このためもあり、配送費を別建てで示している例が多い。

 一般の食品加工業の指標では、売上高対比率で原価70.3%、粗利益29.7%、うち販売管理費26.4%、営業利益3.3%、経常利益4.1%という数値もある。

 製造と同時に多数の直営店で小売している例では、原価率61.8%、粗利益率38.2%、うち販売管理費34.4%、営業利益3.8%、経常利益3.5%となっている。

 29.7%の粗利益を達成するには返品や値引き(特売)まで考えると、平均33%ほどの値入率になることもある。値入率と最終の粗利益率は違うことを知って欲しい。また、価格競争型の商品(主にメーカー品)と個性の出しやすい品(中小工場や6次産業化の品)で、かなり差があることも知って欲しい。

 6次産業化や農商工連携品となると、規模が小さく生産性が低い。原価額が高いから、より「こだわり」を前面に出し、高い売価を設定しないと、並みの粗利益率は確保できない。

 小売の値入率を見ても・・・某チェーンの値入率を紹介すると、中小メーカーの多いコンニャクAは46.2%、コンヤクBは41.7%、豆腐Cは30.0%、ひき割り納豆Dは33.0%、いりごまEは33.7%、片栗粉Fは31.6%とかなり高い。これに反し、皆さんもよく知っているキッコーマン醤油Gは10.1%。QPドレシングHは20.7%、雪印バターIは16.7%、マル米みそJは17.8%と低い。

 大量に売れる売れない、回転が速いか遅いかなども、値入率や売価に関係することも知って欲しい。同時に直売をする場合と、小売や問屋に卸す場合とでは売価の概念が異なってくる。後者の場合は卸売価となるが、上記の小売段階の値入率や売価を考え設定しなければ、相手に受け入れられない。このため付加価値販売が実現しにくくなる。

 70円の原価のものを30%の値入率で売る場合・・・100-30=70  ÷100=0.70(70%の原価率の意味) 70円÷0.70=100円 が売価だが、小売段階でさらに30%の値入をして売る場合、100÷0.70=143円ほどになる。「これでは消費者に買ってもらえない」となると、生産者の粗利益率を15~20%に下げる必要が起きる。実際、販売を小売に任せれば経費が少なくなり、生産者の粗利益なり売価は下げて当然と言える。

 注意しなければならないのは、直接ネット販売するのと、卸や小売業者に任せるのと併用する場合、だれしもネットも見ているので、両者に差がありネット価格が安ければ、安いレベルに小売値を下げるよう要求される。 このため値入率や売価は、卸の場合下がってしまう。「一物一価」の原則が働くので、併用型の場合は売価を統一し、ポイントとか情報サービスとか別のプレミアで対応しなければならなくなる。

 以上から理解できると思うが、自己の粗利益率を高めるには、こだわりを持った個性力を高め、消費者なり小売り側だ「ぜひお宅の商品が欲しい」と言われるようにする必要がある。 

 最後に売価の設定だが、これは原価+販売管理費+利益として積み上げ計算が出来ない場合が多く(原価不明で)、直売所、スーパー、ネットで容量別の価格を徹底的に20~30例ほど調べ、横軸を容量、縦軸を価格とする分散表をパソコンのエクセルで作り、平均傾向線、上限傾向線、下限傾向線を引いてみて、自家の容量および品質・こだわりレベルを考え設定するのが妥当である。



      近藤・支援内容

  該当時間

1.農業のマネージメント講座

3~7時間

2.農産物のマーケティング講座

3~7時間

3.農産物直売所の新たな発展策講座

3時間

4.直売所・顧客視点の販売促進講座

 3時間

5.主婦の食のライフスタイル講座

 3時間

6.直売所顧客調査(200~300人)

2日16時間

7.直売所の総合診断

2日10時間

8.農業経営総合診断

2日10時間

<注>講演3H7万円・7時間10万円 (交通・宿泊別)

リサーチ30万円(交通・宿泊費別)

講演の場合

1時間は4万円

2時間は6万円

経営診断20万円(交通・宿泊費別)

報告日は無料とし、交通・宿泊費別


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